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この記事は2019年7月19日に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

丸亀城石垣崩落から1年。今どうなってるの? 今年も結構雨降ってるけど大丈夫? 第1回丸亀城石垣復旧事業報告会に行ってきました

丸亀城の帯曲輪南面石垣が最初に崩落したのが、去年の7月7日でした。あれから1年が過ぎ、今どうなっているのでしょうか?

応急対策工事も終わり、第1回丸亀城石垣復旧報告会が行われるということで、ライターY口@まるつーが行ってきました。

応急対策工事について

まずは現在の丸亀城石垣崩落現場の姿がこちら。

崩落斜面にモルタルを吹き付けて防水処理しているのは、一目瞭然で分かります。
報告会では、他にも以下のような4つの応急対策をしたとの説明がありました。

  1. 旧城内グラウンドまで落ちた石垣が、これ以上崩れて拡がらないように、大きな土のうと砕石を入れたネット状の袋で押さえ、盛土工事を行いました。
  2. 崩れた部分の土が急な角度になっていたため、緩い勾配にして、表面をモルタルで吹き付けて覆い、雨がしみ込まないよう斜面安定工事を行いました。
  3. 斜面を安定させる工事に合わせて、崩れた石垣の両側および烏帽子(えぼし)のように尖った部分の不安定な石垣を取り除く石垣撤去工事を行いました。
  4. 三の丸に降った雨が、これ以上、土の中にしみ込まないように表面排水処理工事を行いました。

応急対策工事が梅雨までに完成したことにより、雨による更なる崩落は防げるようになった、と市の担当者は考えているそうです。
以前は土の中にしみ込んでいた雨水が全部外に排水されるのであれば、確かに同じ場所での崩落はもう無さそうですね。

では、そもそもどうして崩れたのでしょうか。

石垣崩落の原因について

石垣崩落のメカニズムについては、「はっきりと全容が解明された訳ではなく、あくまで現時点での推定」との前置きで、石垣復旧工事の施工者でもある鹿島建設の担当者から、次のような説明がありました。

丸亀城は亀山の上に築造されているが、基礎となる岩盤は安山岩と花崗岩であり、本丸から南西方向に傾斜しており、雨が降って盛土内に浸透した水が、南西方向へ流れやすい地形と考えられます。
現在ある計測データや写真を元に、現時点で推定される崩落発生メカニズムについては、最初に崩落した帯曲輪南面は、崩落後の写真で表面に石垣が見える事から、すべり破壊(いわゆる、円弧すべり)を起こしたと考えられます。
帯曲輪南西面の石垣前面には、崩落前に大型土のうを設置していましたが、崩落後にはこの大型土のうが見えなくなるほど、背面の土が覆い被さっているため、前に倒れ込むように破壊したのではないかと考えられます。
帯曲輪石垣が崩落した次の日に三の丸石垣が崩落しているため、下部の抑えがなくなったことで、直線もしくは円を描くように崩れたと考えられます。
今後、事業を進めながら、崩れた石垣の位置を特定することや、残っている根石や基礎部分を確認することで、現時点で考えている崩落メカニズムの妥当性の検証を進めてまいります。

引用:丸亀城公式サイト

これは、同時に図を見た方が分かりやすいです。

まず最初(7月7日)の崩落はこんな感じ。

丸亀城公式サイトより

続いて2回目(10月8日)の崩落。石垣がバッタンと前に倒れるイメージなのだそうです。

丸亀城公式サイトより

続いて3回目(10月9日)の崩落。支えがなくなって、ズルッと滑り落ちる感じなのだそうです。

丸亀城公式サイトより

また、市の説明によると、今回崩れた辺りから、築城の段階で既に、何度も石垣が崩れては積み直しを繰り返した形跡も見つかったそうです。

では、なぜそんなユルユルな地面の上に何度もチャレンジして築いた石垣が今まで崩れなかったのか?それは、丸亀城に張り巡らされた排水機構が機能していたからなのだそうですが、そのメカニズムがどうなっていたのか、また、いつから排水機能が止まって雨水が中に貯まるようになったのかは、まだ解明されていないようです。

今後の丸亀市の取り組みについて

まず、復旧事業については、市から次のような報告がありました。

修復しなければならない石垣は約6,000個で、令和6年3月末までの5ヵ年での復旧を目指しています。
具体的には、令和2年度末までに三の丸石垣、崩落石垣、帯曲輪石垣の解体撤去を行い、令和3年度末までに帯曲輪石垣の復旧を行い、また、令和5年度末までに三の丸石垣の復旧を終え、事業の竣工と考えております。

引用:丸亀城公式サイト

丸亀城公式サイトより

丸亀城公式サイトより

丸亀城公式サイトより

当初17年かかると言われていた復旧事業が5年に大幅短縮されたのは、今回の事業を担当する鹿島建設福島県の白河小峰城石垣修復工事などを施工したノウハウがあることや、崩れた場所は元々石垣を組み直す予定だったため、そのつもりで石垣すべてにナンバリングしていたことなどから、工期の短縮が可能になったそうです。「早く元通りになってほしい」と願う市民の声に応えようと、丸亀市が頑張っている姿勢は十分感じられました。ただ、崩落の原因になった石垣の排水構造がまだ解明されていない状態で、本当にそんな短期間でできるの?という疑問は、土木に関しては素人の私も感じました。

また、31.5~35.5億円かかる総事業費のうち、7割は国からの財政支援で賄い、残りは市の予算から支出されるということは、私たちのお財布にも直結する話です。もっと真剣に、自分たちの問題として向き合っていかないといけないな、との思いを強くしました。

そのほかにも、課題克服のための組織体制づくりや、どのような募金活動をしているかなどの報告があり、動画コンテストの応募を呼びかけていました。これについては、また記事にしたいと思います。

他の石垣は大丈夫?耐震問題は?

当日は参加者からの質問コーナーもあり、あまり報道されていないようなデリケートな問題についても質問が相次ぎました。

他の石垣は大丈夫なの?

「崩れた原因は分かった。じゃあ他の石垣は大丈夫なの」というのは当然の疑問ですよね。

その点について、最近気になる現象が他の石垣にも起こっているそうです。それが、石垣のひび割れです。特に三の丸北石垣のひび割れが目立ってきたため、市では本年度から石材にゲージを設置して観測し、定点からの変位観測や地質・水位調査を行っているそうです。

丸亀城公式サイトより

丸亀城公式サイトより

排水の問題は?

「雨が降るたびに水が溜まっている箇所がいくつかあるんだけど、排水の問題は『これからやります』で本当に大丈夫?」という質問が、毎日お城を散歩している方たちからありました。

水の逃げ場がなくなると、必ずどこかに負担が集中しますので、また同じような崩落が起こらないとは限りません。この点について梶市長は「早急に取り掛かります」と回答していましたので、今後の動きに期待したいと思います。

南海トラフ地震が来るらしいけど、耐震問題は?

「南海トラフ地震が起こると、震度7クラスの揺れがあるとも言われているけど、耐震はちゃんと考えてるの?」という質問もありました。

市側の回答では、「震度6は想定して復旧工事をしますが、震度7までは対応できない」とのことでした。震度7クラスの大地震が起こったら、私たちもまずは生活基盤の復旧が最優先となるでしょうから、これは仕方ないのかな、と個人的には思いました。もちろん、被害を最小限に食い止める対策だけは、必ずとっていただきたいものです。

お城まつりのお城村は?

「お城まつりのメイン会場にもなる旧城内グラウンドがこの先数年間は石垣や機材の置き場所になるということは、お城村が無くなるの?」という質問もありました。

市の回答は、「お城村は存続するが、規模は縮小せざるを得ない」というものでした。みんなで知恵を出し合って、限られた中で楽しめるイベントを創りましょう!

今の旧城内グラウンドの様子

当日報告されたその他の資料は、丸亀城公式サイトの石垣修復情報のページから見れますので、興味がある方はそちらをご確認ください。

まとめ

丸亀城は築城400年を超えていますので、石垣の全体的な老朽化は、もうどうしようもないことです。これは何十年も同じ車に乗り続けているようなもので、まめにメンテナンスしないとすぐにどこか具合が悪くなるのは当たり前です。

とは言え、これだけ大きい丸亀城のちょっとした違和感をチェックするのは、行政の力だけでは限界があると思いますので、毎日城内を散歩している市民の「目」をお借りするなどして、官民共同で市民のシンボル「丸亀城」を守っていくシステムが必要なのでは、と思いました。

今年度中には、復旧工事現場の現地見学会も予定しているそうですので、機会があれば皆さんの「目」で丸亀城の現実を確認しておくのもいいと思います。こうした経験のひとつひとつが、丸亀市民の財産として、きっと未来へと繋がっていくことでしょう!