覆面@まるつーとは:全国のニュースをどこからともなく見つけてくる、正体不明の覆面コラムニスト。まるつーとの関係については「コメントを控える」としている。
何が起きた?
環境省が「クマ撃退スプレーの性能に係る推奨要件」というものを公表しました。消費者庁と国民生活センターと三者連名で、「事前の確認・準備が必須です」という注意喚起もあわせて出しています。
かみ砕くと、クマに向けて噴射して身を守るスプレーは、これまで日本にも世界にも「これが基準」という公的なルールがなく、定義も規格も表記のルールもない。そこで国が「選ぶときはこのあたりを目安にしてね」という物差しを初めて示したということです。
目安の中身はカプサイシン(唐辛子の辛み成分)の濃度が1.0〜2.0%程度、届く距離が7.5メートル以上、噴射できる時間が6秒以上、暗がりでも手探りで取り出して向きが分かる形といったところ。ただし数値の一部は二次報道由来なので、正確には環境省の資料で確認するのが確実です。
なぜ話題?
背景には、クマ被害の深刻な増加があります。環境省の速報値では、2025年度の全国のクマによる人的被害は238人、うち死亡13人。これまで最多だった2023年度を上回り、過去最多です。被害の6割超は東北6県に集中しています。
そして厄介なのが市場の実態です。発表によれば、国内には対人用の催涙スプレーを「クマ対策用」と称して売っているものや、海外の登録製品そっくりのラベルを貼った模造品まで確認されているそう。
つまり簡単に言うと、ルールが無かったクマ撃退スプレーに、国が初めて「選び方の目安」を示した。ただし合格の認証ではないと。
覆面が気になったところ
小生がまず引っかかったのは、これが「認証」でも「法律の規格」でもなく、あくまで「目安」だという点です。国のお墨付きが付いた製品リストが出たわけではありません。ここを混同すると、「推奨要件クリア!」と書いてあるだけの怪しい製品にまた引っかかる余地が残ります。
もう一つ。国内流通の12製品を噴射テストしたところ、届く距離が最短3.5メートルから最長10メートル超、噴射時間も約2秒から約37秒までバラバラだったそうです。ここまで差があると、「クマ撃退スプレー」という同じ名前が信用できなくなります。ただしこれは12製品に限った調査で、市場全体や個別製品の優劣を断じるものではないと情報源も念を押しています。
重い話も付け加えると、2025年8月に北海道・羅臼岳で登山者がヒグマに襲われ亡くなった事案で、同行者が持っていたのは対人用スプレーでクマ非対応だった可能性があると毎日新聞は報じています。あくまで報告書に基づく「可能性」の段階ですが、備えの中身が生死を分けうるという重みは伝わってきます。
反対側から見ると
目安を出したこと自体は前進です。買う側に選ぶ物差しができ、対人用転用品や模造品が淘汰されるきっかけにもなります。今年3月のロードマップで掲げた「情報発信」を、国はひとまず形にしたとも言えます。
一方で、認証制度ではないため線引きが甘い、目安を満たさない既存品を持つ人は買い替え判断を迫られるといった負担も残ります。
覆面のひとこと
「目安を作った」は立派。でも一番効くのは、店頭で誰が見ても本物と偽物を見分けられる仕組みでしょう。ルール無き市場に物差し一本を置いただけでは、辛み成分入りの気休めを高値で買わされる人が消えるとは限りません。次の一手を、静かに待ちます。
まとめ
環境省が2026年8月25日、クマ撃退スプレーの推奨要件を公表し、消費者庁・国民生活センターと連名で注意喚起を実施。2025年度の被害は238人・死亡13人で過去最多(速報値)。
中讃地区は東北ほどのクマ出没地ではありませんが、「名前だけで中身を信じない」という教訓は、里山の秋を歩く人にも通じます。備えは、名前ではなく中身で選びたいものです。



